宇都宮市で導入が検討されているLRTの話し
LRT導入後の宇都宮市を想像してみる≫
今回は宇都宮市で話題になっているLRTの話しです。
南北に走るJR東北新幹線、JR宇都宮線に対し、JR宇都宮駅西口の大通り、JR宇都宮駅東口の鬼怒通りを使い
東西に走らせるというLRT構想。
LRTとは何かと言うと「Light Rail Transit」の略で、次世代型の新交通システムとの事ですが、一言でいうと各種
交通機関や車や自転車との乗換えを重視し利便性を高めた現代版の路面電車です。
新交通システム導入課題検討委員会の資料に目を通すまで、宇都宮市で導入を検討しているLRTとは未来的な
デザインを持つただの路面電車で、軌道を敷いてバスの代わりに走らせるだけだと思っていたのですが、想像とは
随分と違ったものでした^^;;
宇都宮市では中長期的に市街地の郊外への拡散を抑制し、街の機能を中心市街地に集中させるといった集約型の
都市構造を目指すのと同時に、中心市街地を基点として周辺の市街地を繋ぐというネットワーク型コンパクトシティ
(連携・集約型都市)を目指してた街づくり戦略を取っています。
昨今の宇都宮市では車依存社会が行き詰まり、道路整備や拡幅も年々難しくなってきており、自動車に変わる公共
交通機関の整備の必要性が高まっている事から、「車を中心とした街」から「車と共存した公共交通を中心とした街」
への転換が必要と判断。
鉄道、バス、タクシー、LRTの各種交通機関に加え、車と自転車を連携させた新しい公共交通ネットワークの整備の
検討をはじめ、LRTという次世代路面電車が候補として浮上しました。
詳しくは宇都宮市HP内、「新交通システム導入に向けた取り組み」の中に、新交通システム導入課題検討委員会の
方により検討された内容や案が詳しく掲載されています。
参考までに下にリンクを張っておきます。
宇都宮市で公開している公式HP : 新交通システム導入に向けた取り組み (宇都宮市) (外部リンク)
車社会の度合いが強い栃木県民からするとLRTと呼ばれる乗り物に抵抗を感じますが、もしLRTが導入されたとしたら
新幹線や宇都宮線に乗り他の地域からJR宇都宮駅を訪れる人やLRTが通る沿線に住む人、特にお年寄りや子供に
とっては便利になりそうですね。
ここではLRT導入検討委員会の検討した資料を中心に、もしLRTが導入された場合に配置される停留所や宇都宮市
周辺の公共交通機関が現在とどう変わるのかを、憶測を踏まえながら掲載してみたいと思います。
※以下、略称とさせて頂きます。
※ 新交通システム導入課題検討委員会 → 検討委員会
※
※LRT、バス共に停留所という言葉が出てきますので以下のように表記を分けさせて頂きます。
※ バスの停留所 → バス停
※ LRTの使う停留所 → 停留所
宇都宮市周辺の現状
LRT導入に関係しそうな宇都宮市の現状についてピックアップしてみました。
◇ 環状道路沿いの発展と中心市街地の過疎化
宇都宮環状道路の開通により環状道路沿いに大型店の出店が相次ぎ、郊外型店舗へ車に乗り買物に出掛けると
いったライフスタイルが定着し、以前賑わっていた宇都宮中心市街地は過疎化の一途を辿り、大型店の撤退や個人
商店が閉店した商店も多く、不名誉ながらシャッター通りと呼ばれる事も多々あります。
比較的活気のあるオリオン通りでさえ、夜の7時には店が閉められ閑散としてしまうオリオン通りですが、転勤や進学
等で宇都宮市に引っ越された方は、宇都宮の夜の早さに驚くそうです。
◇ 車社会
栃木県では移動手段の9割が車、車に対する依存度が高く保有台数が多い。
宇都宮市は1人当たりのガソリン消費量日本一というデータも出ているようです。
栃木県は車社会だという話しを今まで何度も耳にしましたが、まさかガソリン消費量日本一とは・・・^^;;;
◇ 鬼怒川東部方面への渋滞
鬼怒川東部には、清原工業団地、芳賀工業団地、宇都宮テクノポリスセンター地区、芳賀・高根沢工業団地など、
多くの工場が立ち並び、通勤時間帯には道路の混雑が以前から問題に。
◇ 高齢者問題
高齢者の事故が増加、運転に対する不安から免許を返納する高齢者が増えている。
郊外型の店舗が賑わう反面、中心市街地の過疎化が進む宇都宮市ですが、誰もが車に乗って気軽に郊外へ行く
事が出来る訳ではなく、中心市街地周辺に高齢者だけで住み車を持たない人も多く近くの店舗が無くなってしまい
日用品の買出しでさえ不便をきたす高齢者も多い。
今後高齢化が進む中で公共の交通機関であるバスと共にお年寄りの移動手段としてもLRTの導入が検討されて
いる。
◇ バスターミナルと大通りの渋滞
宇都宮市内には165路線ものバスが運行され、大通りには一日に片道だけで1000本を越えるバスが走っている。
JR宇都宮駅前の県道宇都宮停車場線を走るバス走行量は,関東地方でも上位を占めており,バス交通量で第2位、
バス混入率では第1に。
大通りの混雑時にはバスが4〜5台繋がりながら順番にバス停に停車する光景が日常的。
JR宇都宮駅西口バスターミナルにあるバス停の数が多く、路線が充実している割には利用者が迷いその利便性を
フルに発揮出来ていない側面がある。
バスターミナルと西口のメインストリートとなる大通り沿線の路線バスによる渋滞は地域に住む住人に取って見慣れた
光景でしかないかもしれないが、JR宇都宮駅を中心とした地域交通の移動手段としての路線バスの通行量は周辺
道路の許容範囲を既に超えているのかもしれない。
LRT路線案(大まかなルート)
案として持ち上がっている大まかなルートを記載しておきます。
新四号線バイパス(平出交差点)付近から東にかけては鬼怒通りをそのまま使うAルートと鬼怒川に橋梁を新設し
清原工業団地を経由するBルートがありますが、総合的に優位とされたBルートを中心に検討が進められているよう
です。
JR宇都宮駅東西の道路にLRT軌道を敷設。
・JR宇都宮駅西口方面(大通り)
JR宇都宮駅西口 → 二荒山神社 → 東武宇都宮駅 → 桜通り十文字(桜2丁目)交差点付近
※軌道に乗れば鹿沼へ延伸?
・JR宇都宮駅東口方面(鬼怒通り) ※(Bルート)
JR宇都宮駅東口 → ベルモール付近 → 新四号線バイパス(平出交差点)付近
→ 清原工業団地 → テクノポリスセンター
※軌道に乗れば、芳賀町、市貝町、茂木へ延伸?
便宜上5つに分けられた区分
検討委員会による報告書の中ではLRT路線案に該当する地域が便宜上5つの区間に区分けされており、区間ごとの
停留所数が記載されていました。
区間 区間延長 設定停留所数
区間1 桜通り十文字(桜2丁目)交差点 〜 東武宇都宮駅前 約1.3km 4
区間2 東武宇都宮駅前 〜 JR宇都宮駅西口 約1.8km 5
区間3 JR宇都宮駅東口 〜 新4号BP交差部 約4.0km 7
区間4 新4号BP交差部 〜 清原管理センター 約4.6km 4
区間5 清原管理センター 〜 テクノポリスセンター地区 約3.5km 4
総延長 約15km 合計24箇所
報告書等の資料から読み取れるトランジット施設や停留所
区間ごとの設定停留所数の表記はあるものの、停留所が配置される全ての場所については明言されておらず、検討
委員会の方がまとめた参考資料の中で触れられている要所となる停留所や、LRT導入の整備・利用イメージ図(その
1〜3)などの図から読み取れる停留所を下にピックアップしてみました。
※マークの意味
□・・・停留所 ■・・・トランジット ★・・・車両基地 ?・・・不明
<西>
■桜通り十文字(桜2丁目)交差点付近 (トランジット)
│ ・バスの発着・・・大谷、鹿沼、南西部地域方面
│ バス停 ・・・トランジット内
│
□大通りにある清住通り入り口付近?
│ ・バスの発着・・・日光方面
│ バス停 ・・・清住町通り入り口の大通り寄りと思われるが、かなり狭い道路。
│ ※区画整理が計画中との事
│
□池上町交差点付近(東武宇都宮駅が近い)
│ ・バスの発着・・・南部方面
│ バス停 ・・・国道119号線大通り寄り?
│
□宮の橋交差点付近
│ ・バスの発着・・・河内、上河内方面
│ バス停 ・・・県道10号線大通り寄り(宮の橋交差点北側付近)?
│
│ ・バスの発着・・・上三川方面
│ バス停 ・・・県道1号線大通り寄り(宮の橋交差点南側付近)?
│
■JR宇都宮駅西口 (トランジット)
│ ・バスの発着・・・方面は不明
│
■JR宇都宮駅東口 (トランジット)
│ ・バスの発着・・・方面は不明
│
?ベルモール周辺 (トランジット?)
│ ・駐車場・・・ベルモール既設駐車場との結節を図る?
│
★平出交差点付近 (パーク&ライド、車両基地)
│ ・駐車場・・・河内、東部方面からの自動車
│
■清原工業団地内 清原管理センター (トランジット、パーク&ライド)
│ ・バスの発着・・・真岡方面、工場へ向かう企業バス、清原方面(地域内交通、乗合タクシー)
│ バス停 ・・・トランジット内
■テクノポリスセンター地区内 (トランジット、パーク&ライド)
・バスの発着・・・真岡、益子、芳賀、市貝、茂木、高根沢方面、工場へ向かう企業バス
バス停 ・・・トランジット内
<東>
◇ トランジット
LRT路線上に何箇所かにトランジットと呼ばれる乗換え用の施設を配置。
トランジットにはバス停、タクシー乗り場、駐輪場、駐車場などを備える。
また周辺道路の自動車交通に影響を与えないよう、一般者用、身障者用のバース(乗降場)を設置する。
◇ 路線バス(バス&ライド)
現在宇都宮駅西口を起点として集約されている路線バスが分散され、トランジットと呼ばれる施設や主要幹線道路
とLRTの交差点駅近くに設けられるバス停で乗り換える事になる。
◇ 車と駐車場(パーク&ライド)
車利用者の乗継の為に併設される駐車場で停留所に隣接整備される。
現在、車の利用者の多い宇都宮市とその周辺において、車とLRTの乗換えは重要な要素の一つ。
◇ JR宇都宮駅の東西間をLRTで結ぶ
地下を通すのかと思っていましたが、現段階ではJR宇都宮駅北側の在来線と新幹線の間(2階部分)を通す事を
考えているようです。
地下を通し直線で結ぶにはお金が掛かるからかな?^^;
個人的な考察
冒頭でも説明している通りLRTとは鉄道、バス、タクシーなどの各種交通機関や、車や自転車との乗換えを重視し
利便性を高めた現代版の路面電車です。
宇都宮市で検討を重ねているLRTの導入案では総延長が約15kmという広範囲に渡る上、市街地地域については
既存の道路の一部にLRT用の軌道を用意、JR宇都宮駅西口にあるバスターミナルに集約されている路線バスの
バス停を見直し、LRTの駅としての機能を持つトランジットや主要幹線道路との交差点付近に設けるバス停に分散
するというかなり大掛かりな案になっています。
JR東北新幹線、JR在来線、東武宇都宮線、路線バス、タクシー、車、更に自転車や徒歩など、宇都宮市街地を
利用若しくは通過しているほぼ全ての方に大きな変化をもたらすものになりそうです。
本来、保守的な考え方を持つ人が多い宇都宮で湧き上がった話題にしては、かなり斬新な検討案だと言ってよい
でしょう。
『地域』ページ内でも触れている通り、宇都宮市では環状道路の全線開通が環状道路沿いの発展と中心市街地の
過疎化という大きな変化をもたらしました。
現在問題となっている中心市街地の過疎化は予期せぬ事態ではなく、環状道路整備を開始した段階で予め想定
されていた問題であり、宇都宮環状道路全線開通後の効果としては当然の結果です。
当然の結果とはいえ、中心市街地の過疎化を長年に渡り放置してしまうとデパートなどを含む大型店の撤退、個人
商店の閉店が加速し中心部が閑散とし都市としての活力が失われてしまうでしょう。
また、都市の更なる発展という長期的な視野の中においても、中心市街地の過疎化問題は放置出来ない重要な
問題の一つであると言えます。
今回話題として取り上げたLRTの話しは、2009年9月現在宇都宮市でLRT導入を検討している段階のものであり
建設の是非が問うところまでには到っていません。
LRT導入に際しては、検討段階であるにもかかわらず、既にバス会社がLRT導入に反対の姿勢を取っており、
採算性など、想定される問題が数多くあり簡単に実現出来るものではないと思われますが、今回、LRTの導入と
いう形での公共交通ネットワーク整備が実現しなかったとしても、宇都宮市では遅かれ早かれそれに変わる対処
策を正面から取り組み解決しなくてはならない時期にさしかかっていると感じます。
LRT導入に賛成の方、反対の方、様々な意見があると思いますが、まずは宇都宮市で導入が検討されているLRTが
どういったものであるのか、このページに目を通し興味を持ち考えてみるきっかけとなれば幸いです^^
備考
宇都宮市で導入を検討しているLRTの導入案については下記リンク内にある「第4回新交通システム検討委員会
(平成21年3月18日)」の資料を主に参考にさせて頂いています。(一部古い資料も参考)
関連 : 新交通システム導入に向けた取り組み (宇都宮市) (外部リンク)
環状道路については国土交通省道路局のサイトの中で詳しく説明していますので一応リンクを張っておきます。
関連 : 国土交通省 道路局 環状道路 (外部リンク)
LRT導入後の宇都宮市を想像してみる≫
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